社長さん、こんにちは。社労士みなみです。
就業規則を労働基準監督署に提出したとき、書類に押されて戻ってくる「ハンコ」。このハンコの意味を、正確に理解していますか?
「出したし、ハンコももらったし、もう大丈夫だろう」
そのままにしている社長さんは少なくありません。でも実は、このハンコにはよく誤解される点があります。
今日は「受付印」と「受理印」の違いを中心に、就業規則にまつわる勘違いを正直にお伝えします。
「受付印」と「受理印」——この2つは全然違います
まず、言葉の意味から整理しましょう。
💡 「受付」と「受理」は意味が違います
| 受付印 (実際に押されるもの) |
「窓口で書類を受け取りました」という意味のみ。 中身が法律に沿っているかどうかは、一切チェックしていない。 |
| 受理 (よくある誤解) |
内容を審査した上で「問題なし」と認めること。 就業規則の届出では、これは行われない。 |
つまり、法律違反の内容が書かれた就業規則でも、ハンコは押されて戻ってきます。
「ハンコがあるから大丈夫」は根拠にならないんです。ハンコは「お墨付き」でも「合格証明」でもありません。
✅ 正しく理解しておきたいこと
就業規則の内容が適法かどうかを判断するのは、提出時ではなくトラブルが起きたときです。そのときに「ハンコがある」は関係ありません。
そもそも「届出が必要な会社」を正しく把握していますか?
就業規則を作成・届出する義務があるのは、「常時10人以上の労働者を使用している事業所」です。
ここで社長さんがよく誤解されるのが、「10人」の数え方です。
❌ よくある誤解
「正社員だけで10人未満だからうちは関係ない」
✅ 正しい理解
パート・アルバイトも含めて常時10人以上なら届出義務があります。
例えば「正社員7人+パートさん5人=12人」なら、届出が必要です。飲食店や小売店では特に見落としやすいポイントです。
届出義務があるのに提出していない場合、それ自体が法律違反になります。まずは自社の人数を正確に確認してみてください。
「本人が納得してればOK」も通用しません
就業規則の届出ができていても、中身が法律に沿っていなければ意味がありません。
労働基準法には、こんな最低基準があります。
📋 労働基準法の主なルール
- 原則として、1日8時間・週40時間を超えたら残業代が必要
※常時10人未満の商業・サービス業など一部の事業所は、特例で週44時間まで認められています - 6時間超の勤務には45分以上、8時間超には1時間以上の休憩が必須
- 原則として週に最低1日の休日を与えなければならない
※または4週間を通じて4日以上(変形休日制)も認められています
「スタッフが休憩なしでいいと言っている」「本人が長時間希望している」——そう言われても、法律の基準を下回る約束は法律上「なかったこと」になります。
⚠️ こんなリスクがあります
退職後に「未払い残業代を払ってください」と請求されるケースは実際にあります。「あのとき本人が納得していた」は、会社を守る理由にはなりません。
現場に合ったルールは、法律の枠の中で作れます
「法律通りにしたら、うちの現場は回らない」という声もよく聞きます。でも、法律の枠内で現場に合わせる方法はあります。
💡 現場に合った方法で使える仕組みの例
- 変形労働時間制……繁忙期・閑散期で勤務時間を柔軟に調整できる仕組み。トータルで法定時間内に収める形で運用できます。
- 36協定の締結……残業が必要な場合に、会社と労働者代表が取り決めを届け出ることで、一定範囲の残業が合法的に認められます。
- 変形休日制……週1日の休日が難しい業種では、4週間を通じて4日以上の休日を確保する方法も認められています。
大切なのは「現場に合わせてルールをねじ曲げる」のではなく、「法律の枠の中で現場に合った形を探す」こと。そのお手伝いをするのが社労士の仕事です。
📝 この記事のまとめ
- 労基署のハンコ(受付印)は「受け取りました」の証明であり、内容審査ではない
- 「受理」とは違う——ハンコがあっても法律違反の就業規則はそのまま無効
- パート・アルバイトも含めて常時10人以上なら届出義務がある
- 「本人が納得していても」法律の最低基準は下回れない
- 変形労働時間制・36協定など合法的な制度を活用すれば、現場に合ったルール作りはできる
就業規則を作ったのはずいぶん前、あるいは「もらいもの」をそのまま使っている…という社長さんは、一度中身を見直してみることをおすすめします。
会社を守ることと、スタッフを守ること。その両方が、正しい就業規則から始まります。
ご不明な点はお気軽にご相談ください😊
社労士みなみ
年金・社会保険・就業規則の専門家。中小企業の経営者とスタッフ、両方の立場に寄り添ったアドバイスを心がけています。


