社長さん、こんにちは!社労士みなみです。
今回は、シフト制を導入している会社で本当によく見かける「就業規則の超キケンな規定」についてお話しします。
特に、24時間365日稼働することが多い病院、介護施設、ホテルなどの宿泊業、そして飲食業や小売業の皆さんは要チェックです!
あなたの会社の就業規則に、こんな条文はありませんか?
「休日は、4週につき8日とする」
一見、どこにでもある普通の規定に見えますよね。「え?うちもそう書いてあるけど、ギリギリセーフでしょ?」と思った社長さん、油断は禁物です。実はこれ、知らず知らずのうちに未払い残業代を発生させ、最悪の場合「制度自体が是正対象」になってしまう実務上とてもリスキーな規定なんです。
今回は、この「1か月単位」と「4週8休」の組み合わせがなぜ危ないのか、そしてどう直せば安全なのかを、7つのステップでカジュアルに、でも専門家の視点でビシッと解説していきます。
1. 病院・介護・飲食・宿泊・小売でよくある「4週8休」規定
そもそも、なぜ「4週8休」という規定が多いのでしょうか?
実はこれ、かなり昔からの名残なんです。労働基準法の法定労働時間が「週48時間」から「週40時間」へと段階的に短縮されていった時代(平成の初め頃)、土日祝日に関係なくシフトを回さなければならない業界では「どうやって労働時間を減らしつつ、週休2日ペースの休みを確保するか」と頭を悩ませました。
そこで、「4週間(28日間)の中で8日休ませれば、週休2日と同じペースでシフトが回しやすいぞ!」ということで定着したのが「4週8休」という実務慣行です。特に医療、介護、宿泊などの業界で広く普及し、当時の就業規則がそのまま現代まで引き継がれているケースが非常に多いのです。
2. 「1か月単位」と「4週8休」は、実は時間の物差しが違う
さて、現在多くの会社では、給与計算を「毎月末日締め」などの「1か月単位」で行い、労働時間も「1か月単位の変形労働時間制」を採用しています。
ここで問題になるのが「時間の物差しが違う」ということです。
| 単位 | 日数の特徴 | 例えのイメージ |
|---|---|---|
| 1か月 | 暦によって28日、30日、31日と伸縮する | (ゴムのように伸び縮みする物差し) |
| 4週 | 常に28日で固定されている | (常に長さが変わらない定規) |
つまり、労働時間の枠組みは「暦の1か月」という伸縮する物差しで測っているのに、休日は「28日」という固定の物差しで与えている状態です。これ、例えるなら長さの単位に「ゴムのように伸び縮みする物差し」と「常に長さが変わらない定規」を混ぜて建物の設計図を描いているようなもの。実務上、非常にややこしい歪みが生じます。
3. よくある危険パターン:就業規則に両方書いてあるだけ
よくある危険なパターンは、就業規則に次のように両方ただ並べて書いてあるだけのケースです。
❌ よくある規定の例
第〇条(労働時間):
1か月単位の変形労働時間制とし、毎月1日を起算日とする1か月間を平均して週40時間以内とする。
第〇条(休日):
休日は、4週につき8日の休日を与える。
「え、これの何がダメなの?」と思った社長、実はこれ、労基署に入られたら指摘を受けます。
「労働時間の枠は1か月(30日や31日)」で、「休日のペースは4週間(28日)」と、物差しがバラバラのままシフトを組むとどうなるか。毎月のシフトで「この日は何時間働くのか」「いつが休みなの か」をカチッと特定することが極めて難しくなります。
労基署の指導対象になりやすく、運用が厳しくチェックされます。「1か月単位の変形労働時間制」は事前に各日の労働時間を特定することが絶対条件です。シフトがきっちり特定できないと、変形労働時間制の適用が否定され、法定労働時間超過分が残業代対象となるリスクがあります
4. シフト制の会社ほど要注意|勤務日・休日・労働時間が曖昧になりやすい
この混在規定が最も牙をむくのが、現場の「シフト作成」の時です。
現場の店長や施設長が「うちは4週で8日休ませればOKなんだな」という感覚だけでシフトを組むと、リスクを抱え込みます。
① 月の総枠(上限)をいつの間にかオーバーするリスク
1か月単位の変形労働時間制は、月の暦日数によって労働時間の「総枠(上限)」が分単位で厳密に決まっています。計算式は「暦日数 ÷ 7日 × 40時間」です。
- 31日の月: 177.14時間(または切り捨てて177時間)
- 30日の月: 171.42時間(または切り捨てて171時間)
- 28日の月: 160.0時間
残業代の計算根拠になるため、「約〇時間」というアバウトな管理はNGです。暦の月単位で厳密に管理しなければいけないのに、「4週で8休」のペースだけでシフトを組んでいくと、月またぎの週のカウントが曖昧になります。結果、いつの間にか月の総枠をオーバーしてしまい、その「はみ出た時間=未払い残業代」になってしま可能性があります。
② 「起算日」の書き忘れと、割増賃金の計算ミス(法律違反リスク)
シフト制だと「今週は忙しいから休みなし(継続的に週1休日を確保しない運用をする場合)」という週が発生することがありますよね。これが1回でも発生するなら、法律上の「変形休日制」に該当するため、就業規則に「4週間の起算日(いつからスタートする4週間か)」を書くことが義務付けられています。
さらに、これが決まっていないと「どの休みが割増賃金35%の法定休日で、どれが25%の所定休日なのか」がメチャクチャになり、正しい残業代が計算できなくなってしまいます。
5. 放置すると怖い、未払い残業代と労基署対応
「ずっとこのやり方で誰も文句を言ってないから大丈夫」と思って放置していると、ある日突然、退職した従業員から弁護士を通じて未払い賃金の請求が来たり、労働基準監督署の調査が入ったりして発覚します。
もし「制度自体が無効」と判断されれば、過去に遡って多額の残業代支払いが発生するだけでなく、是正勧告を受けて会社全体のシフト管理や給与計算の仕組みを根本から作り直さなければならなくなります。経営にとって致命的なダメージになりかねません。
6. 社長が確認すべき5つのチェックポイント
「うちの会社、もしかしてマズいかも?」と思ったら、今すぐ以下の5つのポイントをチェックしてみてください!
- 就業規則の表記チェック:「1か月単位の変形労働時間制」と「4週8休」という単位の違う言葉が混在していませんか?
- 起算日の特定:4週で休日を回す場合、就業規則に「〇年〇月〇日を起算日とする」と明記されていますか?
- 給与計算とシフトのズレ:給与計算は「月末締め」なのに、シフトは「4週ごと」になっていて、期間がズレていませんか?
- 総枠の厳密な把握:各月の労働時間総枠を正確に把握した上でシフトを作成していますか?
- 法定休日の特定:シフト表を見たときに、「どの日が35%割増になる法定休日か」が明確にわかるようになっていますか?
これらに1つでも「?」がつく場合は、すぐに制度の設計と運用を見直す必要があります。
7. 安全な就業規則にするには「4週8休」をどう書くべきか
では、どうすれば安全に運用できるのでしょうか。
結論から言うと、1か月単位の変形労働時間制を採用し、給与も月単位で計算しているのであれば、実務上は休日も「月単位(あるいは年間カレンダー単位)」に揃える設計にするのが最も確実で安全です。
就業規則の休日の項目を、以下のように実態に合わせて書き換えることをお勧めします。
✨ 実務で使える安全な規定例
第〇条(労働時間及び休日)
従業員の所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制とし、1か月を平均して1週間当たり40時間以内の範囲で定める。
1日の所定労働時間、始業・終業の時刻、休憩時間及び休日は、前項の期間における所定労働時間の総枠の範囲内において、各人ごとに作成するシフト表により、前月の〇日までに特定し通知する。
各月の休日日数は、各人の勤務形態に応じ、年間休日カレンダー等によりあらかじめ定めた月間の休日日数とする。ただし、いかなる場合も毎週少なくとも1回の法定休日を与えるものとする。
このように、「月間の総枠内でシフトを組んで事前特定すること」、そして「休日数も月に応じた日数で管理すること」を就業規則にしっかり明記します。これなら、シフト担当者も「暦月の枠内におさめる」という意識が働きやすくなり、総枠超過や制度無効のリスクを未然に防ぐことができます。
まとめ
「昔から4週8休と書いてあるから」「ひな形をそのまま使ったから」と放置していると、制度の欠陥から知らぬ間に莫大な未払い残業代を抱え込むリスクを持つことになります。
特に病院、介護、飲食、宿泊、小売といった業種では、現場のシフト管理と会社の利益が直結しています。自社の就業規則が、現場の実態に即した「安全で運用可能な設計」になっているか、新年度に向けてぜひ見直してみてくださいね。
「見直したいけど、どう直せばいいかわからない!」という方は、ぜひお気軽に社会保険労務士にご相談ください。会社も従業員も安心できる、ルール作りをサポートします!

