社長さんこんにちは。事業を営み、従業員を雇用している皆様は「法定4帳簿」という言葉をご存知でしょうか?
実は、規模の大小や、個人事業主であるか法人であるかに関わらず、すべての事業者にこの義務は課されています。
本記事では、意外と見落としがちな「法定4帳簿」の重要性や具体的な内容、そして違反した場合のリスクについて詳しく解説します。
1. 昔の「法定3帳簿」から「法定4帳簿」への変化
かつて、文房具屋さんなどで「3点セット」としてよく売られていたのが「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の法定3帳簿でした。労働基準監督署の調査などでも、よく「この3つの帳簿を出してください」と求められていた基本中の基本です。
しかし、2019年の法改正により、これら3つの帳簿に加えて「年次有給休暇の管理簿」が法定4帳簿として義務化されました。法改正からすでに数年が経過していますが、未だに「知らなかった」という事業者や、適切に守れていない事業所も少なくないのが現状です。
2. 法定4帳簿の具体的な内容と記載項目
それでは、事業者が必ず備え付けるべき4つの帳簿について、それぞれの役割と必須の記載項目を見ていきましょう。
① 労働者名簿(労働基準法第107条)
従業員の基本的な情報を記録する名簿です。様式第19号などを使用し、記載内容に漏れがなければ縦書きや独自の様式でも問題ありません。
【主な記載項目】
労働者の氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入年月日、退職や死亡年月日とその理由・原因など。
② 賃金台帳(労働基準法第108条)
給与の計算や支払いの状況を正確に記録する台帳です。様式第20号(常用)や21号(日雇)が基本ですが、必要項目が網羅されていれば別様式でも可能です。
【主な記載項目】
労働者氏名、性別、賃金の計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・深夜・休日労働時間数、基本給や手当等の種類と額、控除項目と額など。
③ 出勤簿等(労働基準法第108条関係)
労働者の出勤日や、日々の始業・終業時刻、労働時間などを正確に把握するための書類です。
【該当する書類の例】
出勤簿やタイムレコーダー等の記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、残業命令書及びその報告書、労働者が記録した労働時間報告書など。
④ 年次有給休暇の管理簿
2019年から新たに必須となった帳簿です。従業員ごとの年次有給休暇の付与日数や取得状況を管理するためのもので、労働基準監督署の調査でも頻繁にチェックされる重要な書類です。
3. 要注意!よくある間違いとNGな管理方法
法定帳簿を作成するうえで、事業者が陥りがちな間違いが存在します。
- 「給与明細」で代用しようとするのはNG
助成金の申請などで給与明細を提出しても、担当者からは「正式な資料ではない」と判断されてしまいます。給与明細は賃金台帳の代わりにはなりません。 - Excelで出勤簿と賃金台帳を一体化するのはNG
出勤簿と賃金台帳をExcelで一つにまとめ、関数などを使って「時間×時給」で縦系列でパッと計算できるようにしているケースがありますが、これは正式な帳簿としては認められません。それぞれの帳簿を独立して適切に管理する必要があります。
4. 保存期間のルールと厳しい罰則
法定帳簿は、ただ作成して終わりではありません。法律に基づいた期間、適切に保存しておく義務があります。
保存期間と起算日
以前は3年間の保存義務とされていましたが、現在は保存義務が5年に延長されています。(※資料によっては「3年」と記載されている場合もありますが、最新の制度に基づく対応が必要です)。従業員が退職した後も、廃棄せずに残しておかなければなりません。
それぞれの起算日(いつから数えて保存するか)は以下の通りです。
- 労働者名簿:労働者の死亡・退職・解雇の日。
- 賃金台帳:労働者の最後の賃金について記入した日。
- 出勤簿:労働者の最後の出勤日。
揃っていない場合の罰則
「少しくらいサボっても大丈夫だろう」という考えは大変危険です。昔からある「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3点セットに関しては、適切に揃っていなかった場合、従業員1人につき30万円以下の罰金が科されることが決まっています。
5. 【おまけ】法定帳簿とあわせて整備すべき「労働条件通知書」
法定4帳簿とあわせて、事業者が必ず交付し、保存しておくべき重要な書類に「労働条件通知書」があります。これは労働基準法第15条で定められており、交付日から3年間の保存が求められます。労使間の紛争を未然に防止するためにも非常に重要な書類です。
労働条件通知書には、以下のような内容を明確に記載する必要があります。
- 労働契約の期間:期間の定めの有無、有期契約の場合は更新の有無や判断基準。
- 就業の場所及び従事する業務の内容。
- 労働時間や休日・休暇:始業・終業の時刻、休憩時間、所定時間外労働の有無、休日や代替休暇について。
- 賃金に関する事項:基本給や手当の額・計算方法、支払いの締め切りと支払時期、割増賃金率など。
- 退職に関する事項:定年制の有無、自己都合退職の手続、解雇の事由など。
6. まとめ:健全な事業運営の第一歩
法定4帳簿の整備は、単に法律違反を避けるためだけのものではありません。助成金を活用して事業を成長させたい場合や、労働基準監督署の調査が入った際に、会社を守るための強力な土台となります。
従業員を1人でも雇用したら、まずは「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」「年次有給休暇の管理簿」の4つが正しく作成・保存されているか、今すぐ確認してみましょう。


