皆さん、こんにちは!2025年が目前に迫る中、「万が一の労使トラブルに備えて、就業規則を全面的に見直したい」という企業からのご相談が急増しています。
その背景にある最大の理由が「トラブル社員への対策」です。しかし、現代の労務問題は、昔のひな形をそのまま使っているだけでは全く通用しません。今回は、これからの時代に会社を守るための就業規則のポイントと、身勝手な休暇取得を防ぎつつ法的義務をクリアする「計画年休」の仕組みについて、徹底的にわかりやすく解説します。
「何がトラブルか」の定義が変わった!180度の視点転換が必要
昔から「トラブル社員」という言葉はありますが、現在においてはその定義が大きく揺らいでいます。
かつて企業側が「トラブルだ」と問題視していた行動が、今の時代では「多様な働き方」や「労働者の正当な権利の主張」として社会的に推奨されるケースも多々あります。
むしろ、古い常識にとらわれた「会社側の受け止め方や対応の仕方」こそが、致命的な労使トラブルを引き起こしかねない時代なのです。これからの就業規則作りは、過去の常識を一度すっぱりと忘れ、全く正反対の視点からもリスクを検証する柔軟さが求められます。
見直すべき「4つの重要テーマ」
最近の労務相談の傾向から、特に優先して対策すべきなのが以下の4つのテーマです。
- 欠勤への対応:無断欠勤や連絡が取れない社員に対し、どう手続きを進めるか。
- 研修受講社員への対応:会社負担で高額な研修を受けさせた後、すぐに退職されてしまう。
- 休職への対応:メンタル不調などによる休職の要件や、復職基準の明確化。
- 退職への対応:円満かつ円滑に進める退職手続きの標準化。
中には「就業規則の穴を突いてくる」ような人も残念ながら存在します。こうした社員による不当な要求や業務阻害を防ぐ防波堤となるのが、隙のない最新の就業規則です。
有給休暇ルールの曖昧さが、問題社員に付け込まれる原因になる
そして、就業規則を整備する上で絶対に放置してはいけないのが「年次有給休暇」の規定です。
2019年4月より、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日は確実に休ませることが企業の義務となりました。労働者が自発的に休まない場合、会社側から「この日に休んでください」と時季を指定する必要があります。
しかし、ここに重要な見落としがあります。
休暇に関する事項は就業規則の「絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)」です。そのため、会社側から有休の時季指定を行う場合、その対象となる労働者の範囲や時季指定の方法について、必ず事前に就業規則に明記しなければなりません。規定がないまま会社都合で時季指定を行えば、最大で30万円以下の罰金が科される可能性があります。
【徹底解説】身勝手な長期休暇を防ぐ「計画年休」とは?
トラブル社員対策として、「繁忙期に突然、身勝手な理由で長期の有給休暇を申請してきて業務が回らない」といった事態を防ぐために非常に有効なのが、厚生労働省も推奨する「計画年休(年次有給休暇の計画的付与制度)」の活用です。
計画年休の基本的な仕組み
有給休暇のうち、「労働者が病気や私用で自由に使える日数として最低5日間」は必ず残しておかなければなりません。しかし、「付与日数から5日を差し引いた残りの日数」については、労使協定を結ぶことで、会社が計画的に「この日を有休とする」とあらかじめ割り振ることができます。
(例:有休が年15日付与される社員の場合、5日は本人の自由な取得用に残し、残りの10日分を会社が計画的に指定して休ませることができます。)
この制度で取得させた日数も「年5日の取得義務」としてカウントされるため、法律のクリアと業務の計画的運営を同時に実現できます。
実務で使える3つの導入パターン
企業の働き方に合わせて、以下の3つの方式から選ぶことができます。
- 企業・事業場全体の「一斉付与方式」
製造業などでよく使われます。お盆や年末年始などに工場や会社全体をストップさせ、全社員一斉に計画年休として休ませる方法です。 - 班・グループ別の「交替制付与方式」
定休日を増やすのが難しい流通業やサービス業などで使われます。A班は第1週、B班は第2週というように、グループごとに交替で計画年休を取得させます。 - カレンダーを活用した「個人別付与方式」
飛び石連休の間(例えば火曜日が祝日の場合の月曜日など)を「ブリッジホリデー」として計画年休に指定し、4連休などの連続休暇を作り出す方法です。また、閑散期の特定の曜日を休みにしたり、社員の誕生日を「アニバーサリー休暇」としてあらかじめ指定しておくことも可能です。
このように前もって計画的に休暇取得日を割り振ることで、労働者はためらいなく休むことができ、会社側も急な欠員に悩まされることなく労務管理がしやすくなります。
要注意!「計画年休」を導入するための2つの必須ルール
この非常に便利な計画年休ですが、社長の思いつきで明日から急に導入することはできません。必ず以下の2つの法的手続きを踏む必要があります。
- 就業規則への記載
まず、就業規則に「労働者代表との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」といった規定を設ける必要があります。 - 労使協定の締結(書面)
従業員の過半数代表者(または労働組合)と、書面による労使協定を結びます。この協定書には「対象者」「計画付与する日数(5日は残すこと)」「具体的な取得日や決定方法」などを明記します。なお、この労使協定は労働基準監督署へ届け出る必要はありませんが、社内で大切に保管し周知する必要があります。
まとめ:ルールを作って実務に落とし込むことが最強の防衛策
社員とのトラブルを防ぐには、単に就業規則のひな形を書き換えるだけでは不十分です。
作成したルールを実際に現場で運用するための「周知文」「社内ポスター」、そしてトラブル発生時にすぐ使える「通知書」のフォーマットまでセットで用意して初めて、真に機能するリスク管理となります。
これからの時代は、過去の常識をアップデートし、法改正に完全対応した就業規則を整備することが、企業防衛の要となります。ぜひこの機会に、自社の就業規則と有給休暇の運用ルールを根本から見直してみてください。


