社長さん、こんにちは。
「パートやアルバイトの人たちにも、就業規則って必要なの?」
「正社員用のがあるから、それでいいんじゃない?」
もし今、そんなふうに思っているとしたら、少し危険かもしれません。
会社を守るため、そして従業員と良い関係を築くために、なぜ「パート・アルバイトのための就業規則」が重要なのか。
1. 法律の世界に「パート」という言葉はない!?
社長さん、驚かれるかもしれませんが、実は法律の世界には「パートタイム」や「アルバイト」という言葉は存在しません。
もちろん、私たちが普段の会話で「彼はバイトだよ」「彼女はパートさんだよ」と言うのは自由です。しかし、会社と従業員のルールを決める大元の法律である「労働基準法」には、そういった区別は一切書かれていないのです。同様に、私たちが当たり前に使っている「正社員」という言葉も、法律には出てきません。
では、法律は何と言っているのでしょうか?
法律に出てくる言葉は、シンプルに「労働者」という言葉だけなんです。
これが何を意味するか、わかりますか?
社長さんが「あくまで補助的なアルバイト」だと思って雇っていたとしても、法律上は正社員と同じ「労働者」として扱われるということです。つまり、基本的には正社員と同じ権利が与えられているのです。
「えっ、正社員と同じ権利!?」とドキッとした社長さん。まずはこの「法律上はみんな同じ労働者である」という大前提を理解することが、トラブルを防ぐ第一歩です。
だからこそ、あえて区別をするのであれば、それを明確にするためのルール、つまり「パート・アルバイトのための就業規則」が必要になってくる場合があるのです。
2. 「正社員との違い」をどうやってつける?
「みんな同じ労働者だと言われても、正社員とアルバイトで待遇が全く同じというのは困る…」
それが経営者としての本音ですよね。
労働時間も責任の重さも違うのに、全て同じ条件にするのは現実的ではありません。
ここで重要になるのが、「法律に書かれていないこと」の扱いです。
例えば、「慶弔休暇(けいちょうきゅうか)」を例に挙げてみましょう。結婚した時のお祝い休暇や、身内の方に不幸があった時のお休みなどです。
実はこの慶弔休暇、法律で「必ず与えなさい」と決まっているものではありません。会社が独自に「うちはこういう休暇をあげますよ」と決めている、いわばサービス(福利厚生)のようなものです。
法律に規定がないものに関しては、会社が自由に決めることができます。
ですので、極端な話、「慶弔休暇は正社員にはあるけれど、パート・アルバイトにはありません(適用しません)」と決めても、法律的には全く問題ありません。
しかし、ここからが重要です。
もし、そうやって「正社員とパート・アルバイトで差をつける」のであれば、それをしっかりとルールとして明記(書いておくこと)しなければなりません。
もし就業規則が「正社員用」の一つしかなかったらどうなるでしょう?
そこにはおそらく「従業員には慶弔休暇を与える」と書いてあるはずです。そして、先ほどお話しした通り、パートも法律上は「労働者(従業員)」です。
もし別のルールブックを作っておかないと、
「就業規則に『従業員には慶弔休暇がある』って書いてありますよね? 私も従業員(労働者)なので、休暇をください!」
とパートさんから言われたとき、断る根拠が曖昧になってしまいます。
労働条件や福利厚生に差をつける場合、口約束や「暗黙の了解」は通用しません。「パート・アルバイト用の就業規則」をしっかり作り、そこで「これは適用する、これは適用しない」と線引きをしておく必要があるのです。
3. 作って満足していませんか? 本当のゴールとは
さて、ここまで読んで「よし、じゃあ急いでパート用の就業規則を作ろう!」と思った社長さん。素晴らしい決断ですが、一つだけ注意点があります。
多くの経営者の方が陥りがちなのが、「就業規則を作ること自体が目的になってしまう」ということです。
専門家に依頼して、立派なファイルに綴じられた就業規則が完成した。
「ああ、これで一安心だ。金庫にしまっておこう」
……これでは、何の意味もありません。
就業規則において一番大切なのは、作った後に「いかに運用するか(どうやって実際に使うか)」ということなのです。
就業規則は、会社と社員の契約書のようなものです。そこに書かれている法律の決まりや、ルールの使い方について、社長自身が正しく理解しておく必要があります。
「なんか難しそうだな…」と思われるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。
要は、
「うちはこういうルールでやっているよ」
「正社員はこうだけど、パートさんはこうだよ」
ということを、法律に基づいて整理し、みんなが迷わないように運用していく。そのための道具が就業規則なのです。
まとめ
パート・アルバイトの就業規則について、社長さんに知っていただきたいポイントは以下の3点です。
- 法律上は「パート」も「正社員」も区別なく、同じ「労働者」である。
- だからこそ、待遇に差をつける(慶弔休暇など)なら、別の就業規則を作って明記する必要がある。
- 作るだけではダメ。内容を理解し、正しく「運用」することが大切。
会社が成長し、人が増えれば増えるほど、「なんとなく」のルールでは対応できなくなります。
パートさんやアルバイトさんが気持ちよく働けて、社長さんも安心して経営に専念できる。そんな会社作りのために、一度「就業規則」を見直してみてはいかがでしょうか。


